トイプードル

トイプードルがかかりやすい病気|早く気づくためのサイン

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落ち葉の上で、黄色いハーネスをつけて座るレッドのトイプードル
Photo: Yasuhiko Ito from Sendai, Japan(CC BY 2.0, Wikimedia Commons)

トイプードルは、日本でいちばん長生きする犬種です。アニコムの2025年版白書では、犬種別の平均寿命で1位(15.3歳)でした。それでも「かかりやすい病気」を調べると、膝、目、心臓、涙やけ、と並ぶだけの記事が多く、自分の愛犬の今の年齢で何を見ればいいのかが分かりません。

この記事は、アニコム損害保険の『家庭どうぶつ白書2024』にあるトイ・プードル157,292頭の請求データを軸に、「かかりやすい」を2つに分けて読みます。件数が多い病気(お腹・皮膚・耳)と、ほかの犬種より起こりやすい病気(前足の骨折・膝・歯・シニアの目と糖尿病)です。そのうえで、年齢ごとに家で気づけるサインを整理します。

「かかりやすい」の2つの意味。左:件数が多い病気(お腹、皮膚、耳)。右:ほかの犬種より起こりやすい病気(前足の骨折、膝、歯、目、糖尿病)

この記事で学べること

  • トイプードルで請求が多い病気と、ほかの犬種より多い病気の違い
  • 子犬のときに気をつける前足の骨折と膝のサイン
  • 毎日目にするお腹・皮膚・耳・目の変化の見方
  • 歯と、せきのこと
  • 11歳ごろから増える目・糖尿病・胆泥症のサイン
  • 受診を急ぐ目安

今日やることは1つ。 ソファやベッドから飛び降りるルートを塞いでください。スロープを置くか、乗せないかのどちらかです。トイプードルで最も金額の大きい病気のひとつ、前足の骨折は、最頻値が0歳です。

記事執筆における出典

「かかりやすい病気」は、根拠の薄い病名の羅列になりがちです。この記事は次の資料にもとづいて書いています。

  • 病気の頻度と年齢 ── アニコム損害保険『家庭どうぶつ白書2024』第2部・品種別の統計(トイ・プードル 157,292頭、0〜12歳)。請求割合、他犬種と比べたオッズ比、最頻値年齢、年間診療費
  • 平均寿命 ── 同『家庭どうぶつ白書2025』(犬種別平均寿命)
  • 遺伝性の病気と検査 ── プードル・クラブ・オブ・アメリカ(PCA)の Health Concerns。トイに求められる検査は、進行性網膜萎縮(PRA)のDNA検査、眼科検診、膝蓋骨脱臼の評価
  • 膝 ── 米国獣医外科専門医協会(ACVS)の膝蓋骨脱臼の解説
  • 気管 ── VCA動物病院の気管虚脱の解説
  • 暮らしの整え方 ── 上記の資料と、トイプードルの飼い方をもとに、BAUDOGが構成しました

この記事が扱うのは、家で気づいて、受診するまでです。診断、治療、薬には踏み込みません。数字は保険請求のデータなので、「病院に行った回数」に近く、病気の有無そのものではありません。

数字で見るトイプードルの病気

出典の記載
対象トイ・プードル 157,292頭(0〜12歳、アニコム白書2024)
平均寿命15.3歳。犬種別で1位(アニコム白書2025)
請求が多い分類消化器 29.1%、皮膚 22.4%、耳 17.7%(大分類別の請求割合)
他犬種より多い病気糖尿病 オッズ比3.20、骨折(前肢)2.58、白内障 2.06、胆泥症 1.92、歯周病 1.89
骨折(前肢)最頻値年齢 0歳。年間診療費の平均 238,129円
膝蓋骨(亜)脱臼請求割合 2.1%(犬全体 1.7%)。最頻値年齢 0歳

オッズ比は「犬全体と比べて何倍起こりやすいか」の目安です。糖尿病と白内障は11歳、骨折と膝は0歳に山があります。同じ「かかりやすい」でも、見る時期がまるで違います。

子犬のとき ── 前足の骨折と膝

トイプードルがほかの犬種と比べて明らかに多いのが、前足の骨折です。オッズ比2.58、最頻値年齢は0歳。細い前足で、高いところから飛び降りたときに折れます。

骨折が起こる場面は、たいてい家の中です。

  • ソファやベッドから飛び降りる
  • 抱っこから落ちる、腕の中で暴れて飛び出す
  • 滑る床で走って、着地に失敗する

予防は、落ちる高さをなくすことです。ソファの横にスロープかステップを置き、抱くときは胸とお尻を両手で支えて、立ったまま子どもに渡さない。フローリングにはマットを敷く。このあたりは家の中の危険を減らすにまとめています。

前足の骨折が起こる3つの場面。ソファから飛び降りる、抱っこから落ちる、滑る床で着地に失敗する

ソファの横にスロープを置き、飛び降りをなくす Image: AI生成(BAUDOG)

膝は、膝蓋骨(膝のお皿)が正常な位置から外れる膝蓋骨脱臼です。ACVSは小型犬に多い整形外科の問題として解説し、軽い段階では症状がはっきり出ないこともあるとしています。家で気づけるのは、歩き方の変化です。

  • 歩いている途中で、片方の後ろ足を数歩だけ上げる
  • スキップのような歩き方をする
  • 立ち上がるとき、後ろ足を後ろに伸ばすような動きをする

ACVSは、症状のない膝蓋骨脱臼は経過観察で、手術はグレード2以上で検討されることが多いと書いています。「たまにスキップする」を放っておかず、次の健診で歩き方を見てもらうのが、家でできることです。

膝のサイン3つ。片方の後ろ足を数歩だけ上げる、スキップのような歩き方、立ち上がるときに後ろ足を伸ばす

毎日目にする ── お腹・皮膚・耳・目

請求の件数でいちばん多いのは、特別な病気ではありません。消化器29.1%、皮膚22.4%、耳17.7%、目10.6%。 どの犬種にもある病気ですが、トイプードルはこの4つで請求の大半を占めます。毎日目にする場所なので、変化に気づきやすい場所でもあります。

場所見るところ気づきのサイン
お腹便と食欲便がゆるい日が続く、吐く、食べない。胃炎・胃腸炎は請求割合12.0%で最頻値0歳
皮膚かゆみ足先をなめる、体をかく、赤い。皮膚は22.4%
耳頭を振る、におい耳をかく、頭を振る、耳のにおいが変わる。垂れ耳で蒸れやすい
目涙の量、目やに涙やけが急に増える、目やにが多い、片目だけ細める

お腹の不調は、子犬で食べてはいけないものを口にすることが原因になりやすく、拾い食いをやめさせると犬に危険な食べ物が役に立ちます。かゆみが続くなら犬のアレルギー、涙やけは涙やけの原因と手入れに、それぞれ気づき方をまとめています。

毎日目にする4つの場所。お腹:便と食欲、皮膚:かゆみ、耳:頭を振る、目:涙と目やに

歯 ── 子犬の乳歯から始まる

歯周病・歯肉炎は請求割合5.7%(犬全体3.7%)、オッズ比1.89で、トイプードルがほかの犬種より多い病気です。最頻値は9歳ですが、白書は「乳歯遺残に起因するものを含む」としています。生えかわりで抜けるはずの乳歯が残り、歯が二重になって汚れがたまるのが、この犬種で起こりやすい入口です。

家で見るのは3つです。

  • 生後7か月ごろに、犬歯が2本並んで生えていないか
  • 口のにおいが変わっていないか
  • 歯の根元が茶色くなっていないか

乳歯遺残。生後7か月ごろ、抜けるはずの乳歯の犬歯が残り、永久歯と2本並んで生えている

歯みがきを嫌がる犬が多い犬種でもあります。歯ブラシを口に入れる前の段階から始める方法は、歯みがきを嫌がる犬の慣らし方に書いています。

せき ── 首輪ではなくハーネス

呼吸器の請求割合は5.1%で、犬全体の平均に近い数字です。ただ、気管炎・気管支炎はオッズ比1.31で少し多く、VCAはトイプードルを気管虚脱が多い犬種のひとつに挙げています。特徴はガチョウの鳴き声のような、乾いた「ガーガー」というせきで、興奮したとき、暑いとき、首輪が引かれたときに出やすいとしています。

家でできるのは、首に力がかからないようにすることです。VCAは首輪ではなくハーネスを勧めています。散歩でせきが出るなら、まずハーネスへの替え方を確かめてください。

11歳ごろから ── 目、糖尿病、胆泥症

トイプードルで「ほかの犬種より多い」病気の上位は、シニアに集まっています。糖尿病(オッズ比3.20、最頻値11歳)、白内障(2.06、11歳)、胆泥症(1.92、11歳)、膵炎(1.52、12歳)、甲状腺機能低下症(1.42、12歳)。 どれも、飼い主が先に気づけるサインがあります。

病気家で気づけるサイン
白内障目が白っぽく見える、暗い場所で物にぶつかる、段差をためらう
糖尿病水を飲む量が急に増えた、おしっこの回数が増えた、食べているのに痩せる
胆泥症・膵炎吐く、食欲が落ちる、元気がない。健診の血液検査やエコーで見つかることが多い
甲状腺機能低下症太る、毛が薄くなる、寒がる、動きたがらない

10歳を過ぎたら、健診を年2回にして、血液検査を入れるのが、この犬種で最もわかりやすい備えです。水を飲む量は「いつもの倍」で気づけるように、ふだんの量を一度は計っておいてください。シニアの暮らしの整え方はシニア犬の家に書いています。

11歳ごろから気づけるサイン4つ。目が白い、水を飲む量が増えた、吐く・食欲が落ちる、太る・毛が薄い

なお、心臓はこの犬種の弱点ではありません。循環器の請求割合は3.4%で、白書では「他犬種に比べ罹りにくい疾患」に「その他の循環器疾患」が入っています。心配を減らせる数字も、知っておいてください。

実践:年齢ごとに、見るところを決める

全部を毎日見る必要はありません。年齢で、見る場所を絞ります。

年齢見るところ今日できること
〜1歳前足(落ちる高さ)、歩き方、乳歯、便ソファにスロープ、床にマット、抱き方をそろえる。7か月で口の中を見る
1〜9歳皮膚のかゆみ、耳、涙、歯のにおい週1回、耳と歯のにおいをかぐ。あご乗せで、触られる練習
10歳〜飲む水の量、目の白さ、体重、吐く回数健診を年2回に。水の量を一度計る。月1回、体重を計る

年齢に関係なく効くのは、触られることに慣れておくことです。耳、口、足先を毎日数秒ずつ触らせてもらえる犬は、家で気づくのも、病院で診てもらうのも早くなります。順番はあご乗せから始めて、ステーションで決まった場所に落ち着けるようにしておくと、健診が楽になります。

年齢ごとに見るところ。〜1歳:前足と歩き方と乳歯、1〜9歳:皮膚と耳と涙と歯、10歳〜:水の量と目と体重

うまくいかないとき

スロープを使わず、横から飛び降りる ── スロープの反対側に壁やクッションを置いて、飛び降りる側をなくします。それでも無理なら、乗せない方が確実です。

耳や口を触らせてくれない ── いきなり奥まで触ろうとしています。あご乗せで「手に顔を乗せると良いことがある」を先に作り、触るのは1秒からです。

涙やけが取れない ── 拭き方の問題より、涙が増えている原因の方が大きいことがあります。涙やけの原因と手入れで原因を分けてから、受診を考えてください。

歯みがきをどうしてもさせてくれない ── 歯ブラシは最後です。指で唇をめくる、歯にガーゼで触れる、を数週間かけて進めます。歯みがきを嫌がる犬の慣らし方の順番どおりに戻ってください。

相談を考える目安

  • 落ちたあと、鳴いた、足を着かない、抱くと嫌がる ── その日のうちに受診
  • 後ろ足を上げたまま数歩以上歩く、または頻度が増えてきた
  • 水を飲む量が、いつもの倍に近い日が続く
  • 片目だけ細める、目が急に白く見える
  • 乾いたせきが数日続く、興奮すると必ず出る
  • 吐く、食べない、便がゆるい、のどれかが2日以上続く

迷ったら、動物病院に電話で「様子を見ていいか」を聞くだけでも構いません。早く聞いた人が、早く安心しています。

最後に

トイプードルの「かかりやすい病気」は、2つに分けると見えてきます。件数が多いのはお腹・皮膚・耳で、これは毎日の観察で気づけます。ほかの犬種より多いのは、子犬の前足の骨折と膝、そしてシニアの目と糖尿病で、これは年齢で見る場所を決めておくことで気づけます。

今日やるのは、ソファの横にスロープを置くこと。それから、あご乗せで触られる練習を始めてください。愛犬が長生きする犬種であることは、数字が示しています。そのぶん、気づく目を長く持ち続けることが、飼い主の仕事です。

出典