柴犬の飼い方|性格・暮らし・気をつけること
柴犬について、いちばんよく見る言葉は「言うことを聞かない」です。次が「触らせてくれない」。
どちらも、しつけの失敗として語られることが多いのですが、この犬種ではかなりの部分が気質です。 そして気質は、直す対象ではありません。
柴犬は、人の指示を待つために作られた犬ではありません。AKCは柴犬を、かつて狩猟に使われた日本の古い犬種と記述しています。自分で判断して動く仕事です。その名残が、今も残っています。
だから従わせようとするほどこじれます。 うまくいっている家庭は、たいてい別のやり方をしています。

この記事で学べること
- 柴犬の大きさ・体重・寿命が、公的な犬種情報でどう書かれているか
- 「言うことを聞かない」の正体と、従わせる代わりに何をするか
- 触られる練習をいつやると、その後10年が変わるか
- 換毛期の実際と、気をつけたい皮膚・目のこと
- 受診を考える目安
今日やることは1つ。 愛犬の足先を、10秒だけ触ってからおやつを渡してください。嫌がったら3秒でやめて構いません。これが一生続くお手入れの土台になります。
記事執筆における出典
柴犬のしつけは、書き手によって言うことが正反対になります。もとにした資料を先に示します。
- 大きさ・体重・寿命・来歴 ── アメリカンケネルクラブ(AKC)の犬種情報
- しつけの方針と社会化 ── 米国獣医行動学会(AVSAB)の声明。罰を用いる手法を推奨していません
- 皮膚のアレルギー ── アメリカ獣医皮膚科学会(ACVD)、およびAKCの解説
- 目の検査 ── アメリカ獣医眼科学会(ACVO)、OFAの遺伝性疾患の資料
- 暮らしの組み立てと手順 ── 上記の資料をもとに、BAUDOGが構成しました
診断や治療には踏み込みません。 どうなったら病院か、までを書きます。
Photo: Dllu(CC BY-SA 4.0, Wikimedia Commons)
数字で見る柴犬
| AKCの記載 | |
|---|---|
| 体高 | オス 14.5〜16.5インチ(約37〜42cm)/メス 13.5〜15.5インチ(約34〜39cm) |
| 体重 | オス 約23ポンド(約10kg)/メス 約17ポンド(約7.7kg) |
| 寿命 | 13〜16年 |
| 犬種人気 | 210犬種中42位(米国) |
AKCは柴犬を「日本でもっとも人気のある家庭犬」と記述しています。日本で見慣れているぶん、犬種としての性質が見落とされやすいとも言えます。
「言うことを聞かない」の正体
柴犬は、指示に従うことそのものに喜びを感じるタイプの犬ではありません。レトリバー系とここが大きく違います。
レトリバーは「人と一緒に作業する」ことが報酬になります。柴犬は**「それをやると自分に何かある」**が必要です。
つまり、こう変わります。
| 向いていないやり方 | 向いているやり方 | |
|---|---|---|
| 呼び戻し | 何度も名前を呼ぶ | 来たら必ず良いことがある、を積む |
| 制止 | 押さえつける | 別の選択肢を用意して、そちらに誘う |
| 練習 | 長時間くり返す | 短く切り上げる。飽きる前にやめる |
| 関係 | 上下を教える | 交渉相手として扱う |
「従わせる」から「取引する」に切り替えると、急に通じるようになります。
とくに呼び戻しは、来たのに嫌なことが起きた経験が1回あるだけで崩れます。 呼んで来たあとに爪を切る、呼んで来たあとに散歩を終わらせる。これをやると、次から来なくなります。おいでを教えるときは、来たあとに必ず良いことで終わらせてください。
叱って従わせる方法を勧めない根拠は、AVSABの声明にあります。罰を用いる手法は恐怖と不安を生み、かえって攻撃性を引き出しうる、というのが獣医行動学の専門家団体の見解です。独立性が高い犬種では、この副作用がとくに出やすくなります。
Illustration: BAUDOG(生成画像)
触られる練習は、時期で効きが変わる
柴犬の飼い主がいちばん困るのは、爪切り・耳の掃除・動物病院です。体を触られるのを好まない個体が多いためです。
ここで効くのが、いつ練習したかです。
- 生後16週まで ── いちばん入ります。足先・耳・口を1日10秒、触ってからおやつ。社会化の窓が開いているあいだは、良い印象がそのまま定着しやすい時期です
- 4〜12か月 ── まだ十分間に合います。爪は1本ずつ。全部やろうとしないこと。動物病院に「何もせず寄るだけ」で行く日を作っておくと、病院が怖い場所になりません
- 1歳を過ぎてから ── できますが、時間がかかります。すでに嫌な記憶があると、それをほどくところから始まります
押さえつけて済ませるほど、次が難しくなります。 これは体感ではなく、嫌な経験が学習として残るという仕組みの話です。
子犬の社会化そのものは子犬の社会化にまとめています。
Illustration: BAUDOG(生成画像)
換毛期は、覚悟がいります
柴犬はダブルコート(上毛と下毛の二重)です。年に2回、下毛がまとまって抜けます。
- 期間は数週間続きます
- 部屋の掃除の量が普段と別物になります
- ブラッシングをさぼると、抜けた毛が皮膚に残って蒸れます
この時期だけは、毎日ブラッシングする前提で予定を組んでおくほうが楽です。
気をつけたい体の部位
皮膚
柴犬は皮膚のアレルギーが知られている犬種です。ACVDやAKCは、犬のアレルギーが皮膚のかゆみとして出ることを解説しています。人の花粉症のように鼻に出るのではなく、体をかく・なめ続けるという形で現れます。
家庭で気づけるのはこのあたりです。
- 足先をなめ続ける。指のあいだが赤い
- 耳を振る、においがする
- お腹や脇の下が赤い
- 季節によって強くなったり弱くなったりする
なめ続けるのは癖ではなく、かゆいことが多いです。 しつけで止める話ではありません。
目
ACVOとOFAは、遺伝性の眼疾患について繁殖前の検査制度を運用しています。柴犬でも緑内障などが知られています。
目が赤い、白目が濁る、目をしょぼしょぼさせる、ぶつかるようになった。 これらは急ぐサインです。目は進行が早いことがあります。
Photo: whity(CC BY 2.0, Wikimedia Commons)
うまくいかないとき
呼んでも来ない ── 来たあとに嫌なことがあった経験を疑ってください。心当たりがあるなら、しばらく「来たら必ず良いことだけ」に戻します。
爪切りで暴れる ── 全部切ろうとするのをやめて、1本で終わりにしてください。1本切っておやつ、で解散。これを2週間続けると変わります。
他の犬に吠える ── 柴犬は他の犬との距離感がはっきりしている個体が多いです。無理に会わせず、距離をとって「見ても落ち着いていられる」から積みます。
触ると唸る ── 唸りを叱らないでください。警告が消えて、いきなり噛む犬になります。どこを触ると唸るかを記録して、痛みがないか動物病院で確認してください。
相談を考える目安
- 足先をなめ続ける、指のあいだが赤い
- 耳を振る、耳がにおう
- 目が赤い、白目が濁る、ぶつかる
- 触られると急に唸るようになった(痛みのことがあります)
- 抜け毛の時期でないのに脱毛がある
これらはお手入れやしつけの範囲ではありません。動物病院で相談してください。
最後に
柴犬と暮らしてうまくいっている家庭は、犬を変えようとしていません。 そういう犬だと受け入れたうえで、環境と伝え方のほうを組み替えています。
指示に従うのが好きな犬ではありません。でも、信頼した相手とは深く付き合う犬です。そこに至る道が、他の犬種と違うだけです。
まず足先を10秒。それからおいでを、良いことだけで積み直してください。