お手入れ

犬がブラッシングを嫌がる・噛む理由と好きにさせる慣らし方

出典あり

コームで白いポメラニアンの毛を落ち着いてとかす人
Photo: Александр Гросс(Unsplashライセンス)

ブラシを出すと逃げる。とかし始めると体をよじる。ひどいときは歯を当ててくる。毎日のことなので、飼い主のほうが先に疲れてしまいます。

犬がブラッシングを嫌がる理由は、多くの場合**「前に痛かった・怖かった記憶」「体を触られることへの苦手」「毛質に合わない道具や毛玉」**のどれかです。アメリカンケネルクラブ(AKC)は、犬は怖い経験や痛い経験をよく覚えていて、特に子犬のころの経験が残りやすいと説明しています。だから、押さえつけて最後までとかすほど、次はもっと嫌がるようになります。

直し方の基本は、ブラシを使う前の「手で触られる練習」までさかのぼり、短い時間で、ごほうびと結びつけ直すことです。噛む・唸るときは痛みが隠れていることもあるので、その見分け方も一緒に説明します。

この記事で学べること

  • 犬がブラッシングを嫌がる5つの理由と、愛犬がどれに当てはまるかの見分け方
  • 嫌がって噛むときに考えられることと、その場でやめるべきこと
  • 毛質ごとのブラシの種類と、皮膚に当てないとかし方
  • 毛玉のほどき方と、トリマー・動物病院に任せる目安。バリカンを怖がるときの慣らし方
  • ブラッシングを好きにさせる4段階の練習と、うまくいかないときの戻り方

今日やることは1つ。 ブラシは出さずに、愛犬が平気な背中を手で3回なでて、1回ごとにおやつをあげてください。それで今日の練習は終わりです。

記事執筆における出典

  • 嫌がる理由と、噛む・唸るときの考え方 ── アメリカンケネルクラブ(AKC)の解説。犬種団体の情報です
  • ブラシの種類、毛玉の扱い、バリカンと鎮静 ── 米国の動物病院グループ VCA の飼い主向け資料(獣医師・獣医行動学の専門医が執筆)
  • 体を触る練習の段階 ── カナダ・ゲルフ大学の研究(Stellato ら, 2019)で使われた触り方の手順と、AKCの「犬が選べるお手入れ」の方法
  • 罰や力で押さえ込まない理由 ── 米国獣医動物行動学会(AVSAB)の見解(2021)
  • 踏み込まない範囲 ── 皮膚の赤みや痛みの原因の判断、鎮静を使うかどうかは獣医師の領域です。この記事では「気づいて受診する」ところまでを書きます

犬がブラッシングを嫌がる5つの理由

まず、愛犬がどれに当てはまるかを見ます。理由によって、最初にやることが変わります。

理由見分けるサイン最初にやること
前に痛かった・怖かったブラシを見ただけで逃げる、隠れる道具を「良いことの合図」に結び直す(下の段階3)
体を触られること自体が苦手手でなでても体がこわばる手で触る練習から(段階2)
道具や力加減が毛質に合っていない特定のブラシのときだけ嫌がる毛質に合う道具に変え、力を抜く
毛玉・皮膚・関節の痛み耳、脇、足の後ろ、腰など決まった場所で怒る練習の前に動物病院で確かめる
じっとしているのが苦手散歩の前や興奮しているときに暴れる散歩や遊びのあと、落ち着いた時間にする

AKCは、ブラッシングを嫌がる理由として、以前に強くとかされた経験や皮膚が敏感なこと、エネルギーが余っていてじっとしていられないことを挙げ、散歩のあとなど疲れているときにとかす方法を紹介しています。また、関節炎や耳の炎症があると、その近くに触れたときに体をびくっとさせることがあるとして、獣医師に痛みの原因を確かめてもらうよう勧めています。

落ち着いて預けるポーズ Image: AI生成(BAUDOG)

嫌がって噛むのはなぜ?

噛む・唸るは、突然出てくるわけではありません。多くの場合、その前に体を遠ざける、顔をそむける、耳を後ろに倒す、頭や体を低くする、しっぽを下げるといった「やめてほしい」のサインが出ています(ストレスサイン、犬のボディランゲージ)。それが通じなかったときの、最後の手段が噛むことです。

噛む前の様子考えられることその場でやること
同じ場所でだけ噛むその場所が痛い(毛玉・皮膚・関節・耳)とかすのをやめ、その場所は受診まで触らない
ブラシを見た瞬間から唸る道具そのものが怖い今日はブラシをしまい、手で触る練習だけにする
とかしている途中で急に噛む長すぎる・引っぱられた時間を短くし、1〜2ストロークで終える

やってはいけないのは、噛まれた瞬間に叱ることと、押さえつけて最後までやり切ることです。 米国獣医動物行動学会(AVSAB)は、痛みや力に頼る方法は恐怖や不安、恐怖からくる攻撃を強めることがあると述べています。唸っても止めてもらえない経験が重なると、警告を飛ばしていきなり噛むようになるおそれがあります。

AKCも、ブラッシング中に噛む・唸るときは専門家の手を借りるべき場面だとしています。安全のために、口輪に慣らす練習を別の時間に進めておくのも一つの方法です。

ブラシの種類と、皮膚への当たり方

道具が毛質に合っていないと、毛が引っぱられたり、皮膚に当たったりして、それだけで嫌がる理由になります。VCAの資料では、毛質ごとに次の道具が向くと説明されています。

毛質向く道具気をつけること
巻き毛で抜けにくい(プードルなど)スリッカーブラシ(細い針金のピンが密に並んだブラシ)力を入れず、毛の表面から少しずつ。皮膚に押し当てない
中くらいの長さで抜ける(レトリバーなど)コーム、または硬めの毛のブラシ抜け毛の多い時期は回数を増やす
短くなめらか(ボクサーなど)グローブ型、または短い毛のブラシ手でなでる感覚に近いので、慣らしの最初にも使える
長い毛(コリーなど)歯の長いコーム下毛のかたまりをほぐすときも、根元を押さえて引っぱらない

どの道具でも大切なのは、やさしく使い、もつれを強く引っぱらないことだとVCAは書いています。どれが合うか迷うときは、かかりつけの動物病院やトリマーに、愛犬の毛を見てもらって聞くのが確実です。道具選びの基本はブラッシングに慣れるにもまとめています。

毛質に合う道具 Illustration: BAUDOG(生成画像)

毛玉は痛い:ほどき方と、任せる目安

VCAは、もつれや毛玉はほどくときに痛いことがあると説明しています。毛玉を無理に引っぱると、その一回でブラッシング嫌いが始まることがあります。毛玉ができやすいのは、耳のまわり、脇の下、足の後ろ側です。

毛玉の状態家でやること任せる先
小さなもつれ、草の実が1つ付いた根元を指で押さえ、先のほうから少しずつほぐす─
大きなかたまり、いくつもある家ではほどこうとしない。はさみは使わないトリマー、動物病院
毛玉の下の皮膚が赤い、触ると痛がるとかさない動物病院

VCAは、毛玉を切り取るときは皮膚を切らないよう細心の注意が要り、はさみではなくバリカンを使うこと、ひどい毛玉はトリマーか獣医師に任せることを勧めています。また、シャンプーの前にもつれを取っておくこと(濡らすとほどけなくなるため)も挙げています。

小さな毛玉の根元を指で押さえ、先のほうからくしでほぐす手元 Image: AI生成(BAUDOG)

バリカンを嫌がるとき

バリカンは、音と振動という、ブラシにはない刺激が加わります。VCAは電動の爪やすりに慣らす手順として、離れた場所でスイッチを入れておやつ、手に持ったまま足に触れる(まだ当てない)、という順番を紹介しています。バリカンも同じ考え方で段階を分けられます。

段階やること次に進む目安
1バリカンを見せる・嗅がせる→おやつ見ても近寄ってくる
2離れた場所でスイッチを入れる→おやつ、切る音がしても食べ続ける
3スイッチを切ったまま、背中にそっと当てる→おやつ当てても体がこわばらない
4スイッチを入れて手に持ち、刃を当てずに体を触る→おやつ振動に気づいても落ち着いている
5背中など平気な場所を、短く一度だけ終わったあとも近くにいる

音への慣らしは脱感作と拮抗条件づけの組み合わせで、「音が鳴るとおいしいものが出る」を先に作ります。

どうしても受け入れられない犬について、VCAは、動物病院で鎮静をかけて毛を刈ることが必要になる場合があると説明しています。あわせて、ハスキーやポメラニアンのように毛の密な犬種では、刈ったあと毛が生えそろうまでに長くかかることがまれにある(最長2年ほど)とも書いています。夏に短くするときも、日焼けを防ぐために毛を少なくとも2.5cmは残すよう勧めています。

ブラッシングを好きにさせる4段階

ここからが練習です。どの段階も1回数分。愛犬がリラックスしてごほうびを食べ続けている間だけ進め、こわばったら一つ前に戻ります。合図にはマーカー(Yes)を使います。

ブラッシングに慣らす4段階。1.落ち着いて体を預ける 2.手で触られても平気 3.道具に良い印象をつけて1ストロークだけ 4.足・しっぽ・お腹など敏感な所も少しずつ、全身を一通り

段階やること次に進む目安
1. 体を預ける横に座る・寝そべる姿勢で、力が抜けた瞬間に「Yes」→おやつその姿勢で30秒ほど落ち着いていられる
2. 手で触る背中→脇と胸→お腹の順に、手でなでて「Yes」→おやつどこを触ってもおやつを食べ続ける
3. 道具に慣らすブラシを見せる→背(とかさない側)を当てる→背中を1ストロークブラシを見ると寄ってくる
4. 全身へ背中・肩など得意な所から、足・しっぽ・お腹へ1〜2ストロークずつ一度に全身でなくてよい。日を分けてよい

段階2の触る順番は、カナダ・ゲルフ大学の研究(Stellato ら, 2019)で飼い主が行った手順と同じ考え方です。研究では体を触る練習を**「首の後ろから腰の手前まで背中をなでる→脇と胸→お腹を含めて円を描くようにマッサージ」**と段階に分け、犬が落ち着いているときだけ次に進むよう指示していました。同じ研究では、練習を続けた犬の飼い主の多くが「怖がり方が減った」と答えています。一方で、参加した飼い主の4割ほどは練習を続けられなかったとも報告されています。短く、毎日少しずつが続けるコツです。

AKCは、犬が自分で「やる・やめる」を選べるお手入れも紹介しています。なめて食べるおやつを床や低いソファに置いて、食べている間だけとかす。犬が離れても追いかけず、戻ってきたら再開する方法です。追いかけて捕まえるのをやめるだけで、ブラシが「逃げる相手」ではなくなります。

じっとしていられない犬は、あご乗せや台に乗るで「動かない姿勢」を先に教えておくと、とかす側も落ち着いて手を動かせます。日ごとの手順で進めたい場合は、ブラッシングを嫌がらず、気持ちよくさせてくれる1週間を使ってください。

うまくいかないとき

様子戻る段階
手で触られること自体を嫌がる段階2。触る場所を、平気な背中に戻す
ブラシを見せただけで逃げる段階3の最初(見せる→おやつ)。とかさない日を数日作る
足・しっぽ・お腹で崩れるそこだけ1ストロークに。背中で成功して終える日を増やす
散歩前だと暴れる時間帯を散歩のあとに変える

次のようなときは、練習を続ける前に相談してください。

  • 唸る・噛むが続く(獣医行動診療医や、陽性強化の認定トレーナーへ)
  • 耳、脇、腰など決まった場所だけ痛がる、触ると鳴く
  • 皮膚に赤み・かさぶた・においがある、毛玉の下がただれている
  • 全身が毛玉でおおわれている(トリマーか動物病院へ。家でほどこうとしない)

よくある質問

ブラッシングを好きにさせる方法は? ブラシを使う前の「手で触られるとおやつが出る」から作り直すことです。1回数分、平気な背中から始め、こわばったら一つ前の段階に戻ります。逃げたときは追いかけず、戻ってきたら再開すると、ブラッシングが「選んで参加するもの」に変わっていきます。

犬が嫌がるブラシはありますか? 特定の商品が嫌われるというより、毛質に合わない道具や強すぎる力が嫌がる原因になります。VCAは、巻き毛の犬にはスリッカーブラシ、抜ける中毛にはコームや硬めの毛のブラシ、短毛にはグローブ型など、毛質で選ぶよう説明しています。どの道具も、皮膚に押し当てず、もつれを引っぱらないことが大切です。

ブラッシングを嫌がって噛むのはなぜですか? 「やめてほしい」のサインが通じなかったか、どこかが痛いことが多いです。同じ場所でだけ噛むなら、毛玉・皮膚・関節・耳の痛みを疑い、動物病院で確かめてください。噛まれた瞬間に叱ったり、押さえつけて続けたりすると、次はもっと早く噛むようになります。

バリカンを嫌がる場合はどうすればいいですか? 音と振動を分けて慣らします。離れた所でスイッチを入れておやつ、スイッチを切ったまま体に当てておやつ、刃を当てずに振動だけ、と段階を踏みます。どうしても無理な場合は、動物病院で鎮静をかけて刈る方法もあるとVCAは説明しています。

トイプードルがブラッシングを嫌がるときは? 巻き毛の犬は毛玉ができやすく、VCAは巻き毛や長い毛の犬には毎日のブラッシングが要るとしています。毛玉ができてからほどくと痛いので、嫌がる子ほど「毛玉ができる前に、短く毎日」が近道です。犬種の特徴はトイプードルの飼い方にまとめています。

ブラッシングの頻度はどれくらいですか? VCAは、長い毛・絹のような毛・巻き毛の犬は毎日、短毛の犬はそれより少なくてよいと説明しています。抜け毛の多い犬は、毎日とかすと家の中の抜け毛も大きく減ります。慣らしている間は、回数より「嫌がらずに終われたか」を優先してください。

最後に

ブラッシング嫌いは、性格ではなく経験で作られたものです。だから、経験を積み直せば変わります。最初の変化は、ブラシを手に取ったときに愛犬が逃げずにこちらを見る瞬間です。そこまで来たら、あとはとかせる範囲を少しずつ広げるだけです。今日は、手で背中を3回なでて、おやつを3つ。そこから始めてください。

出典

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子犬のしつけスターターブック

お迎え準備のチェックリスト、最初の4週間に教える順番、10のコマンドの教え方、書き込める練習記録表。

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